演歌を初めて見た人は必ず驚きます。
なんと演歌の髪の毛はポリエチレンテレフタラートというテレフタル酸とエチレングリコールからなるポリエステルなのでした。
それゆえ演歌はいじめられます。
ある日の学校でのことです。
ある生徒が言いました。
「お前の髪の毛を抜いてペットボトルを作ってやるよ!」
演歌は髪を抜かれて、少し髪の毛が薄くなりました。
ある日の学校でのことです。
ある生徒が言いました。
「お前体もペットボトルなんだろ?じゃあ殴られても痛くないよな!」
実は演歌は体もポリエチレンテレフタラートというテレフタル酸とエチレングリコールからなるポリエステルだったので、核となるポリエチレンテレフタラートが傷付かないかぎりは痛くないのでした。
殴られて、プロレス技をかけられて、演歌はどこも痛くないのに核がとても痛くなりました。
いつも痛い核が、その時は一層痛くなるのでした。
ある日の学校でのことです。
演歌に友達はいません。
――ポリエチレンテレフタラートの自分に、
まして性格が良い訳でもなく、障害も持っている自分に、友達など出来ない。
演歌はそう決めつけて自ら友達を作ろうとはしなかったのです。
待っているだけでは何も起こらない、自分から友達を作ろうとしなければ友達は出来ない。
その時の演歌はそんなこともわからなかったのでした。
ある日の学校でのことです。
演歌は執拗ないじめのために髪の毛がなくなり、体も汚くなっていました。
もういじめる所がなくなった生徒達は、もう何も演歌に干渉しません。
演歌の核は、いじめられていたときより痛くなりました。
ある日の学校でのことです。
演歌は困っている生徒を見つけました。
どうやら薬が漏れているようです。
その生徒が定期的に薬を飲まないと死ぬということ、そしてその薬は首都の大きな病院でしか調合してもらえないことを演歌は知っていました。
まわりに清潔な入れ物がないか探しましたが都合よくは見付かりませんでした。
演歌は体も髪の毛も使い物にならなかったので諦めようとしていました。
そして思い付いたのです。
生徒は薬をそれにいれてお礼を言いました。
演歌も最初で最後の言葉を言いました。
演歌の核はもう痛くありません。
代わりに少し温かくなりました。
助けられた生徒はその日温かい薬を飲むのでした。
演歌の核はもう痛くはありません。
もう止まってしまったけど、それでも痛くはないのです。
ある日の学校でのことです。
助けられた生徒はペットボトルに温かいミルクティを入れていました。
そして呟きます。
「本当にありがとう。君と交わした言葉は一言だけだけど、僕達は親友だよ。」
演歌の核はもう止まってしまったけど、
もう痛くはありません。
代わりに少し温かいのです。
温かいミルクティの外で、演歌はたくさんの友達に囲まれる夢をみるのでした。
温かいミルクティの外で
ポリエチレンテレフタラートの自分が、たくさんの友達に囲まれる夢を
ずっとずっと見ているのでした。
おしまい。

